革の話し

  

平成16年度通常総会 「革の話し」

講師:カリモク家具販売 粂 次郎氏

去る5月26日(水)に第11回通常総会の講演が開かれました。講師は以前お世話になったカリモク家具販売の粂次郎氏です。セミナーの折には木の特性や樹種の話をとてもわかり易くしていただきましたが今回は「革」についてのお話でした。身近な内容で参加者一同とても興味深く聞くことが出来ました。ここにその時の内容をレポートします。


「皮」と「革」

「皮」と「革」は日ごろあまり意識せず使っていますが、以下のような違いが有るのだそうです。
 皮・・・動物についている状態もしくはそれを剥ぎ取った状態
 革・・・皮をなめして(脂肪やたんぱく質をとる)柔らかくした状態

のような違いが有ります。

塩漬けにして運ぶ

革は主に輸入しているわけですが一番多く使われている牛革の輸入元はアメリカ、ニュージーランドです。食用の牛の皮を利用しています。そこからなんと「塩漬け」で運んでくるのだそうです。ですからですから腐ってしまう部分も多く昔はかなりの部分を捨てていました。輸入した物の内使える部分が少ないのでやはり高価な物になります。

どうして今では安くなった?

前記したように革は一昔前まではとても高価な物でしたが現在ではポピュラーな材料になっています。なぜかというと、塩漬けで運ばれる途中で腐ってしまった物も現在では利用しているからだそうです。加工の技術が進んで今まで捨ててしまっていた部分も製品にする事が出来るようになりました。その技術については当日サンプルを見せていただきましたがただただ驚くばかりでした。

皮が製品になるまで

輸入されてきた「皮」が製品になるまでには多くの工程を経ています。1)水漬け、脱毛、石灰漬け塩漬けで運ばれてきた物から塩分を取るために水漬けします。そしてまだ毛がついたままの状態ですから脱毛します。

2)なめし

なめす方法は二通り有ります。
タンニンなめしとクロームなめし です。
タンニンなめしはタンニンに漬けるわけですがとても時間がかかります。1年くらいかかる事も有ります。それに対して酸化クロムを使うクロムなめしは二日間くらいで出来ます。クロームなめしをすると皮はグレーになります。ちょっと傷がつくとグレーの素地が出てくる製品がよく有りますがあれはクロムなめしの製品です。

3)染色 加脂

なめして柔らかくなった皮は脂肪分が抜けているわけですがそこに脂肪分を与えてやるのが加脂です。脂肪は魚の油を使います。そして色をつけます。

4)乾燥

染色 加脂された革は最後に乾燥させます。干し方には
・天日干し
・人口乾燥
が有ります。やはり人口乾燥よりは天日干しの方が高級品となります。

5)塗装

革の表面に塗膜を作ります。塗装の仕方で革の特性が変わってきます。また塗装しない場合も有ります。ときどき革に爪をたてると筋がつくものが有りますがああいう状態です。当然水もしみこみますが通気性を備えています。ただ日本ではそういうものより一見きれいに見える製品が好まれるので、塗装をして有る程度表面を保護します。塗装しすぎると革の通気性は損なわれます。靴など水が滲み込まない物が有りますが通気性もないということになります。

6)型押し

この工程によって今まで捨てていた物も使えるようになりました。要するに革の「型」でプレスするわけです。この工程は革の素材の表面をそのまま使う製品にはありません。あくまでもそのままでは製品として価値が出せない素材に用いられます。

当日は「牛革」で出来た「ワニ革」や「オーストリッチ」を見せていただくことが出来ました。本物と一緒に見ればなんとなくわかりますが片方だけ出されたらなかなか見分けられません。

以上が概ねの工程です。
 

家具用革の仕上の種類

家具用の革の仕上の種類には以下のようなものが有ります。

1)スムース仕上

表面のシボ(表面に有る皮膚の柄)をそのまま生かし塗膜を薄く仕上た革毛穴がそのまま生きておりしなやか通気性が有る。
縫い合わせのシボが有っていない。

2)銀付型押し仕上

塗膜を厚く人工的にシボを型押しした革。
毛穴が少し埋まっている。
縫い合わせのシボが均一に感じる。
※銀とは革の表面の事。この革を銀付革と言う。

3)銀面再生型押し(銀すり)仕上

表面を少し削り人工的に表面を作り塗膜を厚くした革。
表面が硬く冷たい感じ。ビニールレザーに近い感じ。

以上が代表的な仕上です。ちなみにカリモクでは2)、3)は使用していないとの事です。
 

いい革製品の見分け方 

1)縫い合わせが均一でない

前記したように天然の材料である革は同じ模様がないので縫い合わせが合いません。合っているのは型押ししたもの。

2)柔らかい

塗膜を厚く塗ると硬くなります。
素材のよい物は厚く塗る必要がなくその結果柔らかい仕上げとなります。

3)水がしみこむ

塗膜が薄いものもしくはない物は水が滲み込みます。通気性も有ると言う事になります。

4)ぐしゃぐしゃにしても元に戻る。

革の売買は面積単位です。だから少しでも大きな面積を取れるように出来るだけ伸ばして売る事が有ります。当然伸び切っているので一度型崩れするとなおりません。伸ばしてない物が革本来の収縮性で
元に戻ります。購入前に一度お店に行ってくしゃくしゃにしておき次の日に見てみて直っていればいい製品とのことです。

 

以上講演の内容をまとめてみました。革製品購入の参考してください。
あと現在持っている革製品の品定めにも役立つかと思います。