芹沢銈介美術館を訪ねて

 

先日静岡市に行く機会がありましたので、その折にかねてから一度見学したかった芹沢銈介美術館を見学してきました。芹沢銈介は柳宗悦の展開した民藝運動に影響を受け生活に根ざした芸術をめざした染色工芸の作家です。またこの美術館は建築家白井晟一の作品でも有ります。

美術館はあの有名な登呂の遺跡の隣にあります。駐車場から歩いていくと、森の中に赤御影の外壁が現れます。上の写真がアプローチで、その正面には池が有り噴水より水が噴出していました。このまま真っ直ぐ進み、池の手前で左に折れ玄関に向かいます。そして鑑賞しおわって出口をでると、池の手前右側より現れる事になります。要するに池の周りをぐるっと一周する様に、展示室が有るわけです。外壁の赤御影石は少し荒い感じでより重厚なイメージを受けます。(下の写真)

この日は芹沢銈介の作品の他に氏の仮面のコレクションの展示が有りました。世界各地の仮面が有るわけですがほとんどは、非常に原始的な雰囲気を持っています。それだけになおさら人々の喜び、恐れ、悲しみ、願いが伝わってくるような気がします。

アプローチ全景
全体が石で出来ており洞窟の中に入っていくような感じを受けます。
入り口の扉は赤銅色枠のガラス扉です。

内部は少し薄暗い雰囲気ですが、そのためとても落ち着いています。
仕上は床:カーペット、壁:少し荒い塗り壁 天井:木板張り。垂木表しのイメージですが少し太めで
そのためか全体的に骨太な、土着的な空間を作っています。
ただ野暮ったい感じは有りません。
棟木を受けているのは御影石。
気になるのは池に向かって窓が有りますが全て閉じられていました。
開くことが有るんだろうかと思います。
昔同じ白井晟一氏設計の松涛美術館を見に行ったときも
同じ様子でした。?が残ります。

展示室の途中に有るラウンジです。石に囲まれた中庭を持っています。とても落ち着いた完結した空間です。
外部に開くというよりもこの建物だけでひとつの世界を造るという意識が感じ取れます。
壁はビロードのような生地で仕上て有ります。
天井の板はただの平らな板で無く、ちょうなか何かで削り取ったあとが残る板でした。そのほかにも今回の写真では
わかりませんがディテールにとても気を使っています。

階段を数段下がって入る円形の展示室。
この部屋だけは壁が石です。正面にスリット。
天井には円形の天窓。

最後見終わってここに出てきます。
格子戸の向こうがショップ。

「静の空間」。この建物を体験してそんな事を思いました。建物を見ようなどという邪念無しに訪れればきっともっと自分の内面に迫るものが有るのではないかと思います。
セミナーで訪問した丈山苑で感じたすがすがしさというようなものは有りませんが、やはりここ自分を見つめるにはいい空間かなと思います。もし近くに行かれる事が有ればぜひお勧めします。 (藤嶋)

建築家 白井晟一
1905-1983