「車椅子体験セミナー」

 

去る3月8日今年度最後のセミナー「車椅子体験セミナー」が開かれました。
今回の企画は昨年度開催のセミナー「 使う側の人から聞く望ましいバリアフリーの形と形態」からさらに一歩踏み込み自分たちで車椅子を体験し実際に使っている方々の気持ちを少しでも理解しようというものでした。

今回参加人数は8人(会員3名一般5名)と少なめでしたがとても有意義なセミナーで有ったと思います。

今回の講師及び案内をして下さったのは岡崎市にあるNPO法人岡崎自立生活センター ぴあはうすの 村松龍也氏と大尾嘉和也氏です。

セミナーは岡崎市福祉会館に13時に集合し村松さんより、ぴあはうすの説明、セミナーの内容の説明、などがありその後大尾嘉さんより車椅子の扱い方の説明が有りました。このようなセミナーが有る場合はいつもこのコンビで行っているそうです。

当日の行動予定
13:00~13:00   セミナーの説明、車椅子の扱い方の説明
13:30          ショッピングセンターイオンにバスで移動
※バス停までは車椅子で移動
14:15          イオン着 店内を車椅子で見学
15:30          イオンよりバスで岡崎福祉会館に向かう
16:30          福祉会館到着
16:30~17:00    反省会


 

車椅子の扱い方の説明を受けています。左写真の後ろで立っているのが大尾嘉さん。
車椅子の介助をするときに守らなくてはいけない事の説明が有りました。

1)なるべくゆっくり衝撃を与えないよう静かに押す。
2)動かす前に乗っている人に必ず声を掛ける。

どちらも乗っている人の事を考えれば当然の事なのですがついつい忘れてしまいます。
実際に経験してみてそう思いました。

このあと二人一組になりバス停まで向かいました。皆さんが口をそろえて言っていたのは、健常者にとっては何でもない、歩道の傾斜、特に進行方向と直角方向の傾斜は特に気を使います。これはなれていないせいかもしれません。とにかく押している方は腕に力が入り、翌日には痛みが出るほどでした。

また1,2㎝くらいの段でも非常に気になりました。後ろのタイヤはそれなりに大きく、空気も
入っているので大丈夫なのですが段を最初に超える前のタイヤは小さく固いのでそういうわけにはいきません。移動中なんどか前輪を持ち上げることが有りました。それと目の不自由な方の為の点字ブロックですがそれを超えるときに意外と振動が伝わる
ということも感じました。

さていよいよバスに乗り込みます。

「車椅子でバスに乗る」ということの意味を全然わかっていませんでした。これまでは何かリフトのような物で乗り入れるとばかり思っていたのです。このことは参加者のほとんどの方がそう思っていたようです。
で実際は
※ここは東岡崎のバスセンターですがこれと同じ事を普通のバス停でもするわけです。

  
左)
バスのステップの下に収納されている折りたたみ式のスロープを取り出します。
中央)
折りたたみ式スロープを広げています。
右)
スロープをバスの床に向かって掛け、はずれないようにフックを掛けます。

左)
ここで初めて介護者が押して乗り込みます。介護者がいるときは原則として介護者が押します。奥に立っているのが運転手さんです。
右)
無事に乗り込みました。この写真ではよくわかりませんが車椅子を固定するために複雑な金具を取り付けます。それも全て運転手さんが付けてくださいます。健常者の感覚で有れば握りバーを持っていれば大丈夫では?と思ったりしがちですが結構重量の思い物と一体になっているので支えきれません。まして急ブレーキなどの時は創造するだけでも恐ろしく感じます。また車内での事故はバス会社の責任を問われるということもあり得ます。そんなわけでしっかりと固定します。

次に写真は有りませんが先ほど出したスロープを元の場所に格納します。ここでやっと出発できます。約10分近くかかります。運転手さんも研修を受けられているわけですが毎日こういう機会が有るわけでも無いと思いますのでいつもそんなに手際よく出来ません。実際かかる時間はかなりばらつきが有りました。本当に頭が下がります。

これだけの作業が必要ということ、その間乗客の方にも待ってもらっていることを知ったとき、物見遊山的な気持ちではいけないと気が引き締まりました。

前記しましたが以上の作業を普通のバス停でもするわけでとても大変でした。バス停はそれように作ってないことが多く、実際に乗り込む段になりバスを乗り降りしやすい場所まで移動して行っています。特に昔のように車掌さんがいるわけでもないのでなおさらです。
 

■ショッピングセンターイオンでは

ショッピングセンターのイオンではそれぞれの組で店内を移動しました。そこで感じたことはやはり視線が低いことによるいろいろな不自由です。展示してある商品は1.5m~1.6m位を想定して展示してあるのでそれより30㎝くらい低い目線ではなかなか思うように商品を見ることが出来まないだろうと思いました。
通路の巾は特に洋服売り場などの狭い所ではでは通るのがやっとでした。また書籍売り場などの通路は両側に壁が立ちふさがっているわけでもし地震でもと思うとぞっとします。また私たちの組は入りませんでしたが便所はとてもひろく使いやすそうで有ったと入った方が言っておられました。

野外を移動する時と違いこういう物、人共に多いところではその視線の低さからくる圧迫感をいろいろなところで感じました。もちろん商品を選ぶことも大変だろうと思います。それと何かあったらという不安はきっと想像以上と思います。私たちは健常者として体験しているのですからいざとなったら走って逃げられますから本当の不安はたぶんわかりません。

バスの乗り降りを静かに待っていてくださった乗客の皆さんの時もそうですが店内をいろいろ見て回っていてなにか奇異なものを見ると言った視線はまるで感じませんでした。
 

■岡崎福祉会館への帰路

今バスから降りて運転手さんがスロープを片付けているところ。このときも正規の位置から少しバックして停車しそこでおろしてもらいました。すこし見えていますが工事中のために降りられなかった訳ではなく、人は通れる巾は有るのですがスロープを掛けるための巾が足りなかったので移動したわけです。
 

■バスの話

このセミナーの打ち合わせに事前に名鉄バスに行ったとき聞いた話なのですが、以前はこのようなバスは非常に少なかったそうです。万博を機に県から補助金がでてそれで一気に増えたと言うことです。改造したのかと思っていたのですがそうではなく車両を入れ替えたのだそうです。乗ってみるとわかるのですが対応のバスと、そうでないバスはまるで構造が違います。なにより床の高さが(ノンステップバスでなくても)違うので改造というのは根本的に無理だそうです。

名鉄では定期的に運転手さんの講習を開きなるべくスムーズに乗り降りできるようにつとめているとのことでした。今回お世話になったぴあはうすの村松さんも講師として講習に行かれるとおゃっていました。その時聞いた残念な話ですが、乗降の時10分程度停車するわけです。そのことに対して理解のない一般のドライバーがまだいるということです。具体的にはクラクションを鳴らしたり、ひどいときになるとわざわざ車を降り怒鳴り込んでくる方もいるとのことです。狭い道路事情で対向車がおおいとなかなか抜けずいらつくないという事情は有ると思いますが悲しい気がします。
 

■反省会

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この日福祉会館にもどってから反省会が開かれました。各自村松さんからの要望で感想文を書きました。その内容については次回紹介したいともいます。
 

■総括

今回のセミナーを体験してみて車椅子をとりまくいろいろなことを少しも理解していないことに気づかされました。
歩道のわずかな傾斜、凸凹が想像以上に負担になること一人で出かけることがとても大変なことバスを利用するということがとても大変なこと物理的なバリアが精神的なバリアをますます高くしてしまうこと(急に車椅子の生活になた場合あのバスでの乗り降りを考えると躊躇してしまうと感じます。)社会全体が今以上に当たり前のこととして受け入れる環境が必要なことそのたもろもろ。今回参加できなかった方もこのような機会がもしあった一度参加されることをおすすめします。

今回のセミナーにつては談話室でも草次さんが紹介してくださっていますので併せてご覧下さい。

記:藤嶋和義